認知症患者にはいろいろなサポートが必要になるが、その代表例が食事介助である。認知症は症状が進行していく特徴があるため、進行度に応じた食事介助をしなければいけない。症状がごく軽い場合は、健康な高齢者への対応と大きな違いはないのが通例だ。配膳を完了したあと、よくかんで食べてくださいなどの注意をしたあとは基本的に見守るだけでよい。必ずしも付きっきりでサポートにあたらなくてもよいのが軽症者の特徴といえる。
認知症の症状が重くなると、だんだん目が離せなくなる。口に入れた食品を適切にかんだり飲み込んだりすることが困難になっている場合があるからだ。食事中は常に様子を見たり、適切な量をスプーンですくったりするなどの食事介助が必要になる。食道や気管に食べたものをつまらせると、健康上の大きなリスクにつながるおそれがあるので要注意だ。
認知症がもっとも進行した状況になると、適切なタイミングでの食事の拒否や、食べ終えたばかりなのに再び食べたがるなどの異常行動を示す場合がある。このようなときは認知症のために論理的な説得は通用しないこともあるので、介助者の経験が問われる場面だ。無理に食べさせずに時間をずらしたり、食事とは別の話題に誘導したりするなどの対応ができると望ましい。食事のタイミングをずらすのはよくある対応だが、食後に服用する医薬品を利用している場合は食事のタイミングを変えすぎないほうがよい。主治医と相談する必要があるだろう。